書評:「労働災害・通勤災害のことならこの1冊」

書評ブログ

自分が読んだ本について、

  • どんな人におすすめか?
  • どこが良かったか?
  • 自分なりの感想

などを書いています。

 

今回読んだ本

  • 労働災害・通勤災害のことならこの1冊

 

※注意:以下の文章で、「このケースは労災として認められる」「このケースは認められない」と書いていますが、細かい事情によって結果が正反対になるケースも多いので、ご自身のケースを考える場合は労働基準監督署にきくか、専門家に相談してください。

 

どういう人が読むといいか

  • 仕事中や通勤中に事故にあった人、もしくはあった時の対応がよくわからない人
  • 本来なら労災保険から給付がもらえたのに、と後悔したくない人
  • 社会保険労務士を目指している人

 

読んで得られるもの

  • 仕事中にケガをした場合や病気になった場合にどうすればいいかわかる
  • どういうケースで労災保険の給付がもらえるかがわかるので、もらえないケースに該当する行動を控えられる
  • 実際に事故にあった場合、労災を申請してくれない会社もあるので、自分自身が知っておかないと労災を申請しそびれる可能性もある
    • その場合、生涯で数千万円損する可能性すらある。そう考えるとこの本を読んで得られるメリットは計り知れない

 

良かった点

  • 見開きの2ページで1問1答形式で書かれているので、飽きずにサクサク読めた
  • 事例が一般的な話が多かったのでイメージしやすかった
  • 法律的な文章が少なかったので読みやすかった

 

読んでわかったこと・ためになったこと

  • 業務上災害と通勤災害との相違点
    • 休業待機の3日間について、使用者の保証義務は業務上災害だけにある
    • 通勤災害の場合、労基法上の解雇制限の適用なし
  • 休日に緊急呼び出しを受けて会社に向かう途中でケガした場合は通勤災害ではなく業務上災害となる
    • 呼び出しという命令を受けてからの行動であり、指揮命令下に入った状態でのケガだから
  • そもそもなぜ労災認定してもらいたいのか?
    • 日常でのケガだと認定されると健康保険の適用で3割負担の医療費を支払うことになるが、労災だと治療費は基本無料
    • 会社を休んでいる時は無給状態になる可能性があるが、労災なら労災保険等から給料の8割を支給してもらえるなど
  • 労災保険の休業補償給付は、会社から支給される賃金との調整は無し
  • 健康保険の傷病手当金だと支給された賃金分だけ傷病手当金が減らされる
  • 労災保険指定病院で治療を受けないと、後から支払った治療費を支給してもらえるが全額もらえないケースもある
    • 治療費支給に際して査定を行って、必要とされる治療費を支給するので、その必要とされる治療費分しかもらえない
  • 事故にあった場合、加害者と示談をするのは注意が必要
    • 仕組みとして、労災保険を管掌している国が治療費などを支払ってくれるが加害者がいる場合は、そのかかった費用をその給付額を限度としてその加害者に求償する
    • 勝手に示談して損害賠償額を決めてしまうと、一部の金額について損害賠償請求権を放棄したとみなされる可能性がある
    • そうなると国はその限度でケガをした人に対しての給付義務を免れる

 

労災と認めてもらえるかどうか

※この結論は、今回の本を読んで私なりに理解したものなので、そのまま自分自身のケースとして適用しないようお願いします。

※かなり省略して書いているため、誤解を招く表現になっている箇所もあるのでご注意願います。

  • 仕事中に風にとばされた自分の帽子を拾おうとして道路にとっさに出てしまい、乗用車にはねられた場合
    • 帽子を拾う行為は業務を中断している間なので本来は労災の対象外だが、反射的にとっさにとった行動なので認めてもらえる
  • 一般的に業務を中断している間に発生した災害は労災保険の対象外だが、トイレやタバコといった最低限の用事であればOK
  • 営業先を回っている際に、自分と直接仕事で関係しない人の手伝いをしてあげている最中にケガをした場合
    • 道義的な問題は別にして、労災は認められない→業務遂行性がないから
  • 会社の運動会でケガをした場合
    • 強制参加なら認められる
  • 社会人野球や国体・オリンピックでのケガ
    • 会社からその参加が出勤として認められていて、旅費なども経費として認められるようなものならOK
  • 労災保険に特別加入している社長がケガをした
    • 通達にない場合は認めてもらえない
    • 例えば残業中だと認めてもらえない場合がある
  • 女性従業員がストーカーに襲われてケガをした
    • 個人的な事情であり業務遂行性がないと判断されるため認めてもらえない
  • 出張中において、ホテルに戻る時にケガをした
    • 出張中は積極的な私的行為でない限り、ずっと会社の指揮命令下にあると判断されるので認められる
    • 出張中でもプライベートで酒を飲みに行ったり、友人に会う・観光をするなどでのケガは認められない
  • 入社前研修でケガをした
    • 認めてもらえる可能性が高いが、賃金が支給されていないなどがあると認められない場合も
  • 通勤中に該当するかどうかは、その場所が自分の私有部分かどうかで決まる
    • マンションの廊下などの共用部分でのケガなら認めてもらえる
    • 一戸建ての庭でのケガだと私有部分なので認めてもらえない
  • 会社で禁止されているバイク通勤をして通勤していた際のケガ
    • 会社で禁止されていても合理的な通勤方法であれば認めてもらえる
  • 会社帰りに飲み屋で飲んだら、そのあとでケガしても認めてもらえない
    • 通勤は中断したとされるから
    • 一人暮らしの人が帰りがけにご飯を食べた後はOK(日常生活上必要とされる)
    • 個人の事情で結果が大きく変わるので注意
  • 通勤災害は合理的な経路及び方法でないとダメ
    • 信号無視してる際のケガは認めてもらえない
    • 無免許運転も基本認めてもらえない

 

読んだ感想

  • どういう場合に労災がもらえるかもらえないか、というのを数多くの事例をもとに解説してくれているので、非常にわかりやすかった
  • 社会保険労務士試験の勉強としても、とても参考になる1冊で、本試験で出ていた内容もあった
  • 社会人なら一度読んでおくと、万一自分や周りの人が仕事中や通勤中に事故にあった時に役に立つと思った

 

本の詳細

  • 著者:河野 順一(こうの じゅんいち)
  • 出版社:自由国民社
  • 価格:1700円+税
  • ページ数:246ページ

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